カニの床屋さんは森のファッションリーダーでした。仕事の合い間にいつも可愛い物を追い求めているのです。

　　今日もカニさんは可愛いものを求めて、森の中へやってきました。可憐なお花や鮮やかな色の鳥の羽など、森には可愛いものがいっぱいあるのです。そんなカニさんの目の前に、それはそれは綺麗な金髪の女の子が現れました。

　　「まあ、なんで素敵な金髪なんでしょう。星様の光を受けてきらきらと輝いているわ。」カニさんはうっとりとして、女の子に見蕩れてしまいました。

　　けれど、そうして女の子を見ているうちに、カニさんはある事に気づきました。せっかく可愛い顔をしているというのに、少女の顔は雲っていて、すごく悲しそうなのです。

　　「どうしてそんな悲しい顔をしてるの？よかったら話してみて。」

　　カニさんが話しかけると、女の子は顔を上げてカニさんに事情を話しました。

　　女の子のお爺さんが病気になってしまい、治すには薬がいるんですが、薬の材料になる薬草が見つからなくて困っていたというのです。

　　よくよく聞いてみると、その薬草はカニさんがよく知っている草でした。

　　「それなら知ってるわ。ちょっと見つけづらい場所にあるけれど、ここから歩いていけるところよ。案內してあげるわ。」

　　「ほんと？ありがとう、カニさん。」

　　こうして女の子はカニさんに案內してもらい、薬草の生える場所までやってきました。

　　「あーすごい。たくさん生えているのね。」そう言って、女の子は薬草を摘もうとすると、カニさんが「ちょっと待って！」と止めました。薬草にはたくさんの棘がついていたのです。カニさんは自慢のはさみを使って、その棘を一つ殘らず切り取りました。

　　「はい、これで大丈夫。」

　　「ありがとう、カニさん。このご恩を忘れないわ。」女の子はカニさんにお禮を言って、お爺さんの待つ村へ帰ってきました。

　　それからしばらくして、女の子はカニの床屋さんへやってきました。

　　「薬が効いてお爺さんはすっかり元気になりました。ほんとうにありがとう。」

　　そういう女の子の笑顔はきらきらと輝いていてとても綺麗でした。

　　お仕舞い。